はたされなかった夢
以前の会社にいた時の話。
家を建てたいのだと言う男性が来店しました。
年の頃は30代後半?・・・。建築関係の仕事をしているとの事。
「冷やかし?。本気で建てたいと思っているのかな?・・・。」と思ったのが、私の正直な気持ちでした。人は見かけによらないものだと自分に言い聞かせながら、話を聞いていました。話を聞いているうちに、本気で家を持ちたいのだと言う気持ちが、伝わってきました。本人がその気なら、こちらも本気で探さないといけません。
お兄さんを目標に!
家族や親戚の中で自分は、はみ出し者、兄弟はみんな持ち家、自分もそのうちに「絶対自分の家を建てる!」のが夢だったそうです。18才から建築関係の会社に勤め、20年以上も、ずっと同じところで頑張ってきたのだとか。技術職なので今は結構な年収でした(働き始めたころからの給料明細を見せてもらいました。ほとんど休んだこともなかったそうです)。土地探しをするにあたり、ほぼ毎日のように仕事帰りに寄るようになりました。
色んな話をしました。車とバイクが大好きで、とても楽しそうに話してくれました。間取はもう、決めてあって、一戸建てだけど1LDK。寝室と広めのリビングダイニング。リビングには、オートバイを展示できるようにして、ピカピカに磨いたオートバイを日がな眺めて暮らすのだそうです。
緩やかな坂道の途中にある約50坪、何とか土地が見つかりました。本人も大層気に入ってくれました。建築は知り合いに頼んで設計をお願いし、融資の方は、取引先の担当者に相談すると、自己資金もあるし(1、000万を優に超えていました)勤続年数も問題なく、融資を受けられる事になりました。
本申込の時はちょっと大変でした(^^)。何が大変って、見た目がやんちゃなお兄さんでしたので、服装を真面目にして、ボタンもきちんと留めて・・・。変な座り方をしない等々(笑)。銀行に行く前に一通りに練習をして(勿論反社会的な人ではありません。)本人はメチャクチャ緊張したそうです。銀行との契約も無事終わり、全てが順調に行っているかのようにみえました。
解雇!!?
ビックリしました。会社を解雇されたというのです。会社の中で色々とあったようなですが、本人はかなり落ち込んで、労働基準局に相談に行ったり、弁護士さんに相談したり、それでも先の事を考えると、眠れなかったようです。詳しくは分かりませんが、会社に戻る事はせず、自分で仕事を始めるのだと言っていました。名刺迄作って張り切っていました。
連休前に
大型連休の前に、いつものように仕事帰りに寄ってくれました。(契約が終わった後も良く遊びに来ていました。)大きなケーキの箱を持っていました。箱の上には、無地熨斗に「いつも、ありがとう!」と書いて有りました。お店の人に書いてもらったんだと照れていました。開けてみると、種類の違うケーキが12個!!。これも食べさせたいあれもと思ううちに、だったら全部の種類を入れちゃえってなったそうです。「いくら何でも、太っちゃうよ!」って大笑い。気持ちがとっても嬉しかったです。
連休が終わって・・
連休が明けて、出勤すると、警察から電話ありました。
「○○さんを、ご存知ですか?。」知ってると言うと、自ら命を絶ったとの事、私の名刺があったので、連絡をしたとの事でした。言葉もなく・・・。
休み前のあのケーキはお別れだったのです。心情を察してあげられなかったことが悔やまれてなりません。彼を知る人の話では、うつ状態になっていたとの事、少しも気が付きませんでした。解雇が余程堪えたのでしょう。
この業界に入って一番の悲しい出来事で、忘れられない出来事になりました。私たちの仕事は、人の家庭の中や気持ちの中に入り込まざるを得ない時があります。ブログに書こうかどうしようか迷ったのですが、色んな経験をしながら、仕事をさせて頂いていることを、知ってほしい気持ちがあって、思い切って文章にしました。
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