斜面崩落事故! 責任は誰に!?
2020年2月5日、神奈川県逗子市池子2丁目にある某マンションに隣接する斜面が崩壊し、通行中の方がお亡くなりになるという痛ましい事故が起きました。崩れた斜面の幅は約9m、高さ8m、土砂の重さは約70t近くに達していたそうです。地震によるものではなく、また大雨による影響でもなく、風化による斜面の崩壊という見方が濃厚です。
この事故を考える上で問題になるのが責任の所在です。このような事故の責任の所在を明確にする根拠(法律)はどこにあるのか記事にしてみました。
逗子市の斜面崩落事故
事故が起きた現場は公道(幅8m)に面し高さ約15mの急斜面で、その斜面の上に建てられたマンションの敷地内(私有地)にあります。前面道路は京浜急行「神武寺駅」に繋がる道路であり、通勤や通学で比較的人通りの多い道路ということもあり、2011年に県は当該斜面を「土砂災害警戒区域(急傾斜地)」に指定していました。
ここで問題になるのはこの事故の責任は誰にあるのかということです。責任の所在は当然ながら被害者への賠償にも関係することになりますので非常に重要な問題でもあります。
今回の事故は前述の通り、地震や大雨といった自然災害によるものではなく、擁壁や斜面の風化・劣化に起因したものと見られております(2020年2月17日現在)。だとすると、事故の原因は事故現場となった斜面(擁壁含む)の管理が不十分であったということです。
日本には土地工作物責任という制度があり、この辺りの責任は明確にされております。
土地工作物責任(民法717条)
民法には「土地工作物責任」という条文があります。
土地工作物とは土地に接着した人工的作業によってできたものを意味し、塀、擁壁、建物(付随するもの含む)は勿論のこと、ゴルフコースやスキーのゲレンデといった土地の地形を含むこともあります。
この法律を要約しますと
◆工作物に欠陥や不十分な管理があったことで他人に損害を与えた場合、占有者(賃借人等)が損害賠償責任を負う。但し、占有者が損害を防止するための必要な措置を行っていた場合、占有者は免責となる。
◆占有者が免責事由を証明できた場合(無過失)、或いは占有者=所有者の場合、所有者が損害賠償責任を負う。所有者の損害賠償責任は無過失、有過失に係わらず負う。
(欠陥工事で建築施工側に問題があったとしても一次的に所有者が責任を負います)
◆上記の内容は竹木の植栽についても同様(例:敷地から道路に張り出した植栽による被害)。
事故の責任は?
この法律から逗子市の斜面崩落事故を考えますと、擁壁を含んだ斜面は土地工作物にあたり土地工作物責任はあると考えられます。そして、この斜面は某マンションの敷地内ですから、某マンションの区分所有者に対して、この事故の責任を問われる可能性が高いと思います。
ただ、前面道路が公道であり、且つ、土砂災害警戒区域に指定されていた現場に対して、過去、行政が具体的な指導を行っていなかったようで、行政の責任も問われるかもしれません。
いずれにしましても、ご遺族のお気持ちを考えますと早い解決を期待します。
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