国土交通省の『心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)』が決まる!
以前のブログでも記事にしましたが、現在、不動産業界においては“室内での人の死に関する心理的瑕疵”について明確なルールや判断基準がなく、予てからトラブルの要因の一つとなっておりました。
今般、国土交通省が心理的瑕疵(室内での死亡事故)に対する取扱いについて、ガイドライン(案)を策定し、パブリックコメント(広く一般の意見を募集)を開始することになったようです。
パブリックコメントを行った上で正式なガイドラインを制定することになります。
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ガイドライン(案)の内容
パブリックコメントを経て制度化することになるわけですが、現状のガイドライン(案)の内容はどうなっているのでしょうか?
私の方でザックリとまとめてみました。
対象となる事案及び不動産の範囲
本ガイドラインにおける対象とする事案は“不動産において生じた人の死に関する事案”に限定。
また、対象とする不動産の範囲は居住用不動産としています。
隣接住戸や前面道路等、対象不動産以外で生じた事案は対象外となりますが、集合住宅については専有部分に加え、(買主・借主が)日常生活において使用する場所(共用部分等)も含むとしております。
(買主、貸主に)告知しなければならない事案
他殺、自殺、事故死、その他原因が明らかでない死亡(例 事故死か自然死か明らかでない)は告知しなければなりません。
一方で、自然死(老衰、持病による病死等)や日常生活の中での不慮の死(階段からの転落、入浴中の転倒事故、食事中の誤嚥等)については原則として告知する必要はないとしております。
ただし、死亡後長期間に亘って放置され、室内外に臭気や害虫等が発生し、特殊清掃等が行われた場合は原則として告げる必要があります。
宅建業者の調査方法
媒介を行う宅建業者は売主、貸主に対して告知書等の書面に過去に生じた事案について記載を求めることにより情報収集としての調査義務を果たしたものとするようです。
この際、記載されていない過去の事案が後日判明したとしても宅建業者に重大な過失がない限り、調査は適正になされたものとみなされます。
告知について
<1>賃貸契約の場合
①告げるべき内容:事案の発生時期、場所及び死因(不明である場合はその旨)
②告げるべき範囲:事案の発生から概ね3年間
※なお、死亡後長期間に亘って放置された事案については、発見時期、臭気・害虫等が発生した旨について事案の発生から3年間は告げる必要があるとしています。
<2>売買契約について
①告げるべき内容:(賃貸同様)事案の発生時期、場所及び死因
②告げるべき範囲:期間の明記なし
売買契約の場合、過去の判例や取引実務等が現時点において十分に蓄積されていないので、宅建業者は「調査(告知書等)を通じて判明した範囲」で告げるものとしています。
期間の明記がないので、知りうることは何年経っても告知する必要があると解釈できます。
ガイドラインに思うこと
心理的瑕疵の範囲が「他殺」、「自殺」、「事故死」、「その他原因不明の死亡」及び「死亡後長期間放置」に限定されたことは運用上かなりわかりやすくなったと思います。
また、賃貸については告げるべき期間の範囲が概ね3年となったことで、心理的瑕疵物件を抱える大家さんからすれば経済的負担が軽減されるのではないかと思います。
一方、売買に関しては具体的な告げるべき期間の範囲が明記されていませんので、知っていることは何年前の話でも告知しなければならないことになり、ある程度の期間は決めてほしかったと正直、思います。
勿論、ガイドライン上の期間の縛りがあっても、「大島てる」に代表される事故物件サイトに載ってしまうと半永久的に事故物件として晒されるわけで、今のデジタル社会においてはどこまで効果があるのかという懸念は残りますが。
冒頭でも申しましたとおり、現状、パブリックコメントを開始しております。
ガイドラインがさらに良くなるよう、皆様も意見を述べられては如何でしょうか。
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