業者から見た物件査定についての所感(その①)
最近では不動産の一括査定サイトが多数ありますので、不動産会社に直接問い合わせなくとも一括で多数の不動産会社の査定を得ることができます。つくづく便利な時代になったと思います。
しかし、不動産査定とは不動産会社が直接買い取る価格ではなく「たぶんこれぐらいで売れると思います」というもの。買取査定は金額を約束するものであるのに対し、(仲介の)物件査定はこれで売れますと確約するものではありません。
ただ、物件査定は近隣の相場を当然加味しているので、本来的には各不動産会社の査定額は大きく異なることはないはずです。しかし、複数に査定を依頼するとかなりの開きが生じることがあります。
これは何が原因なのでしょうか?
今回は業者側から見た物件査定について思うところを書いてみたいと思います。
ある売却相談の話
あるお客様から空き家となった物件のご相談がありました。
長女家族と同居することになりそれまで住んでいた住居が空き家となったため、今後どのように扱うことが適切かとのご相談でした。
弊社からはお客様の財産状況や健康状態を踏まえ①戸建賃貸、②アパート新築、③更地にして駐車場、④売却のシミュレーションを行い、最終的に売却のご提案を致しました。お客様はご家族で検討され、多額の出費を要するものはNG、2人のお子様は既にマイホームを保有しており相続を望むものがいない、地域的に今後の人口減少により地価下落圧力が強く長期保有は財産形成上メリットが少ないといった理由から売却を決断されました。
査定価格に納得できない!
その後、売却の取引の流れをご説明して、ご依頼のあった査定書を呈示、媒介契約書(※1)もお渡ししました。
ところが査定額に納得いかなかったようでした。お客様が考えていた価格を大きく下回っていました。
弊社からは近隣相場を前提に類似物件の取引事例等の資料を根拠にご説明しましたが納得しません。
こちらからは過剰に期待させるわけにもいかず、「売値は最終的には売主が決めるものですからご希望の価格で売りに出すことは可能です。ただし、相場に比べて割高というご認識は必要です」と説明しました。
お客様からは「少し検討させてください」と言われその場は終わりました。
※1 媒介契約・・・不動産を売却する場合、基本的には不動産会社に仲介を依頼しますが、その際締結されるものが媒介契約です。売主と不動産会社が媒介契約を締結し、その上で売却のための活動が始まります。媒介契約には3つの形態があります。売却の仲介を1社のみに依頼する「専属専任媒介」と「専任媒介」、仲介を複数の不動産会社に依頼できる「一般媒介」の3形態です。
「他社に売却をお願いすることになりました」
その後、連絡が取れなくなり2週間後に連絡ついた時には「申し訳ないが、****(大手財閥系仲介会社)に売却をお願いすることになりました」との話。
お客様の希望価格で売却できると言われたことが決め手だと言います(おそらく“できる”とは言ってないと思います。売却できる可能性は“ある”とでも言っていたのではないかと想像します)。営業担当としてはこういうケースが最も落ち込みます。この売却という決断に至るまでに何度も足を運び、様々シミュレーションを想定して提案書を作成して時間と労力をかけながら、お客様にプロセスを評価されない。虚しく、自らの営業力のなさ、お客様との信頼関係が構築出来ていない等々反省することが多いです。
業者によって査定額に大きな開きが生じるのか?
ただ、ここでふと疑問に感じられると思いますが、仲介業者によっては売却価格に大きな差が生じるのかということです。
この話の結末はこうです。
不動産業者間で情報を共有するためのシステムとしてREINS(レインズ)があります。このレインズを見ていましたらそれから1週間後、某大手財閥系仲介会社の仲介でお客様のご希望の価格で掲載されていました。相場に比べて高い価格の為当然売れません。売りに出してから1か月後に値段が下がり、それから定期的に値段が下がり、気が付くと弊社が査定した金額あたりまで値段が下がっていました。それから物件を追うことは止めましたので結局、いくらで売却できたのかわかりません。ただ、納得感と虚しさと後悔の念が混じり複雑な心境になったことを覚えております。
→次回ブログ記事に続きます。
関連した記事を読む
- 2024/10/05
- 2024/09/28
- 2024/09/21
- 2024/09/15