業者から見た物件査定についての所感(その③)
昨日のブログ記事の続きです(今日で終わりです)。
これまでのお話をまとめます。
✔仲介会社の査定価格はあくまで「この価格で売れると思います」というもので売却を約束するものではない。また、売却価格には相場があり、大手仲介会社であろうとなかろうと相場を無視した価格では売却できない。
✔不動産仲介会社の収益は(大半が)仲介手数料であり、物元(売主側)を抑えることが優先される傾向がある。
✔そのため売却の媒介をとることが先決とされ、査定価格を高値に誘導する傾向がある。
✔売主から売却の依頼(媒介契約)を受けた元付仲介の中には、両手仲介をとするべく買主優先の交渉を進めるところもある(囲い込みにより売主に不利益をもたらすところは注意が必要!)
✔一方で査定する際に利用する情報はレインズであることが大半。レインズは加盟会社であればどの業者でもアクセスできるもので、結果、本来的には査定の結果には大きな違いは生じない。
ミスプライスはエリア外の業者に多い
レインズの情報を見ていると稀に「おっ安いな!」と感じる物件があります。そういった物件はすぐに売れていきますが、元付業者がエリア外の業者であることが多いです。
売主より単独指名で媒介をとった業者だと思いますが、地域の特性についてしっかりと把握していないのでミスプライスが生じると考えられます。同じ地域であっても土地の形状、近隣環境、細かいことでは坂の上、坂の下によっても物件の価値は微妙に異なります。そのあたりの地域性を理解していない遠方地にいる業者ということです。
感覚的な話になりますが、物件を売りに出してから3~4日間で買い手が見つかるケースは業者のミスプライス(安く値付け)であることが多いと思います。早く売れると「売れて良かった」と思われると思いますが、実はもう少し高く売れていたということかもしれません(全てのケースということではありませんので)。
売却に時間がかかっている理由は??
一方、売却を依頼してからほとんど反響(問い合わせ等)がない、或いは半年から1年程経過しても売却できない場合はどこかに原因があります。理由は単純、以下のいずれかだと思います。
① 売出価格が相場に比べて高すぎる
② 単純に買い手がいない(エリア内の住宅需要が少ない)
③ 売却を依頼している仲介会社が適切な売却活動を行っていない。
① ②は売却価格を下げることで問題は解消されますが、③についてはやっかいです。
レインズにしっかりと載せているのか、他の広告媒体は何を利用しているのか、両手仲介を意図した営業は行われていないか等々・・・確認したいものです。
売却する際に注意すること
前述しましたとおり仲介会社は売主から媒介契約を頂くことに傾倒し適正な査定を行わないこともあります。また、現在はインターネットで物件を探される方が大半であり、大手やブランド力のある会社が高く良い条件で売るという時代ではありません。
それでは不動産売却に際し何を注意すべきなのでしょうか。
以下まとめてみました。
1. 単純に査定価格が高いというだけで仲介会社を選ばないで下さい。
複数社に査定依頼して査定価格が高いというだけで選ぶことは避けた方がよいと思います。
査定金額に計数的、具体的な根拠があるのか確認してみて下さい。
また、売り出し後に仲介から値下げの提案を受ける時があれば、値下げする上でのロジカルな根拠があるのか確認してみて下さい。
2. 査定を依頼する場合、査定物件の地域をよく知る地場の不動産会社も加えてみて下さい。
地場の不動産会社は営業エリア内であれば細かいことまで把握しています。同じ地域で10年も20年も営業してきた者は地域ごとの特性や細かいことでは地面の高低差まで頭の中に入っています。エリアを熟知した営業担当者に一度は相談してみて下さい。
3. 両手仲介を意識的に牽制してみて下さい。
弊社は両手仲介を100%否定しているわけではありません。売主の希望通りに売却できるのであれば、問題はないと思います。ただ、一方で、物件の囲い込みにより売主が不利益を被ることもありますので、(売却の)媒介を依頼する時はあえて“片手仲介”でも行うか確認してみて下さい。直接的な効果は期待できませんが、“両手仲介”の意味合いを知っているということを示すことで一定の牽制になるかと思います。
4. 売却の媒介を依頼する際は売却の営業方法を確認してみて下さい。
売却を進めるにあたりどのような方法で、どの広告サイトを利用して行うのか聞いてみるとよいと思います。
時にはセカンドオピニオンも必要です。
売却を依頼してから一向に連絡がない、進捗がわからない、どのように売却活動をしているのかわからない等々、不安になることもあるかと思います。
このようなときは他の不動産会社の意見を聞いてみても良いと思います。
実際、「一般媒介契約」にしてレインズに載せない(※1)、レインズに図面を載せていない(※2)、あるいは客付仲介から内覧依頼を断る等々 両手仲介を目論む“囲い込み”を露骨に行うところもあります。お客様からは見えにくいところでも業者間であればその物件をどのように販売しているのかわかります。
他の業者にチェックさせるという行為に抵抗感じるかと思いますが、こういった動きが業界をより健全なものに変えていくのではないかと思います。
売却を依頼したら全てを任せるのではなく、ご自身でもチェックされてはいかがでしょうか。
【注釈】
※1・・・媒介契約には“一般媒介契約”、“専任媒介契約”、“専属専任媒介契約”の3種類の契約形態があります。この中で“専任媒介契約”、“専属専任媒介契約”は特定の仲介会社1社との契約しか認められません。そのため、媒介契約後にレインズへの掲載義務があります。
一方、“一般媒介契約”は複数の仲介会社と媒介契約を締結することが出来ますが、レインズへの掲載は任意となります。そのため、あえて“一般媒介契約”としてレインズに掲載せず、両手仲介を目論む悪質な仲介会社も存在するようです。
※2・・・レインズには文字情報を入力しますが、加えて販売図面も登録することできます。販売図面には物件写真や間取図等販売するに際しての必要な情報が多く載せられます。この販売図面が掲載されていない場合、客付仲介会社は自身の顧客への営業が難しいものになります。
関連した記事を読む
- 2024/10/05
- 2024/09/28
- 2024/09/21
- 2024/09/15