オーナーチェンジ物件のリスク
不動産投資は一般的に一棟マンションや一棟アパート、一戸建てを購入して家賃収入を得ることで投下資本を回収、最終的に相応の採算性を確保することを目的としております。
これらの物件を“収益不動産”と総称しますが、物件購入時に既に入居者(賃借人)がついている物件を“オーナーチェンジ物件”と言います。その名の通り大家さんが変わるという意味ですね。
不動産投資にリスクはつきものですが、本日はこのオーナーチェンジ物件特有のリスクが顕在化したケースを取り上げたいと思います。
オーナーチェンジ物件のリスク
オーナチェンジ物件は購入後即、賃料が入ってくるので賃貸運営上安定すること、採算の見通しが立てやすいこと、ローンを組む場合返済原資が確保できること等々メリットは多いです。
しかし、デメリットもあります。
いくつかありますが、最大のデメリットは(賃貸中の部屋は)室内を確認できないことです。
賃貸契約上賃借人には善管注意義務が課せられておりますので、投資物件を購入する場合、賃貸中の部屋は節度を持って適切に使用されているだろうと想定して行います。あくまでも性善説によるものです。
ところが世の中、いろんな人がいます。残念ながらこの性善説を大きく裏切る方もおります。
そしてこの“いろんな人”にオーナーチェンジ物件のリスクが内在しているのです。
過去、何度も退去の立会を行いましたが、その中で最も驚愕した賃借人のケースを見てみたいと思います。
家賃5.6万円、3LDK(50㎡)のアパートでのこと
シングルマザーと子供2人の3人家族が住んでいたお部屋で退去となりました。下の子の独立を機に小さい部屋に引越しとなったようでした。入居期間が(なんと!!)22年と長期亘っておりましたので、室内汚れ、住設の劣化、損傷はある程度「止む無し」と覚悟して部屋に入りました。
外観からでは全く想像できない凄惨な光景が広がる
室内に一歩入ると洗面所の壁が剥がれていました。さらに進むと床板が剥がれて下の地面が見えます。
壁は穴だらけ、クロスは剥がれ、何故かほとんどのドアが外されていました・・・。
「何があったんですか?」
茫然とした私が何とか絞り出した言葉です。
「息子が反抗期だった時に・・・」
「直そうと思ったら余計に酷くなって・・・」
全く理由になっていませんが、それ以上聞くことをやめました。
それよりもこの原状回復費用はいくらになるのか? そして誰が負担するのか?
暗澹たる気持ちでいっぱいになりました。
実は賃借人は生活保護受給者だったのです・・・
驚きの原状回復費用
すぐさま、リフォーム会社に連絡して、原状回復費用の見積もりを依頼しました。
数日後、見積もりが上がってきました。
もう一度言いますが、これは家賃5.6万円のアパートの一室の原状回復費用です。
すぐに役所に連絡して賃借人(生活保護受給者)の担当者にこの状況を伝えました。
役所の反応は想像通り、払えないの一点張り。資力のない賃借人に支払うことは不可能で、結局、オーナーさんが負担しました(賃借人(退去者)からは毎月1万円づつ回収することになりました)。
家賃5.6万円、原状回復費用約200万円ですから、回収に3年~4年かかります。言い換えれば3~4年はただで貸すことになるのです。
オーナーさんがこの一棟アパートを購入する際に想定していた投資利回りは悪化してしまいました。
オーナーチェンジ物件の評価尺度は入居率だけではありません!
これは極端なケースですが、オーナーチェンジ物件の怖さは室内を確認できないことにつきます。
満室の場合は1つの部屋も確認することもなく購入するわけですから、その分リスクも生じます。
賃借人の入居期間が長いと物件に対する満足度が高い、物件のクオリティの高さを表していると解釈できないこともありませんが、反面、退去時には相応の費用が掛かるわけで、その分を採算から差し引いて考える必要があると思います。
オーナーチェンジ物件を購入する際には入居率ばかりが注目されますが、入居者の質といいますか、入居期間等もしっかり精査することが必要と考えます。
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