人口動態から見る不動産の未来(その③)
不動産価値の下落圧力を高めるさらなる問題
一方、高齢化のさらなる進展は多死社会をもたらします。現状、年間137万人(平成30年)の死亡数が20年後には170万人にまで増えると予想されています。人の死は必然的に相続を生じさせます。
現在、高齢者の持ち家率は8割を超えているそうです。多死社会は土地の相続の増加をもたらし、土地の売却件数は間違いなく増加してくと思われます。加えて、昨今では社会問題にもなっている空き家の問題があります。野村総合研究所の予想では2033年には空き家率は27.3%と予想しており、実に3戸に1戸は空き家という世界になる可能性があります。
当然、売り物件が多いということは住宅価格(土地)の下落圧力が高くなるということでもあります。不動産業界は需要(生産年齢人口減少)が減って、供給(相続による売却や空き家)が増えるという構図になるわけです。
他方、働き手の減少は都市のライフライン(電気、ガス、水道等)、交通機関、医療等の質の低下を招きます。言い換えると都市機能の維持が困難になる地域が出てきます。これは不動産価値のさらなる地域間格差を生じさせると予想できます。
日本の高齢化とその速度は人類史上前例のないものと言われます。それ故にどのような不測自体が引き起こされるかわかりません。場合によっては、さらなる技術革新によりAIの浸透、自動車の自動運転の普及等で高齢化が引き起こす問題が緩和されるといった意外な結果となるかもしれません。
しかし、間違いなく言えることはこれから超長期的に不動産には下落圧力がかかってくるということです。
世帯類型の変化
現在の日本の世帯数は約5402万世帯(IPSS資料より)です。驚くことに世帯数は今後も増え続けます。
IPSSによりますと、ピークは2024年頃で5419万世帯と予測されています。その後は少しづつ減少し、2040年には5076万世帯(2015年比▲5%程)となる見込みです。
人口が急激に減少していく一方で世帯数が増え続けることに違和感がありますが、これは“単身世帯”の増加が背景にあります。
これを如実に表しているのが「1世帯あたりの人数」です。1980年の1世帯当たりの人数は約3.2人でした。2015年には2.33人まで減少しており、今後もこの数字は減少していきます(2040年には2.08人)。
2040年の世界では10戸のうち4戸が単身世帯(39.3%)、夫婦&子供世帯は10戸のうち2戸(23.3%)となります。ファミリー世帯が圧倒的な少数派になります。これは今から20年先の将来の話です。
⇒次回のブログに続きます。
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